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伸びるローカル流通
第1部 4期連続増収チェーンの施策とは
流通研究チーム
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1.苦戦する大型小売店
 2008年9月のリーマン・ショックを契機とする株価の暴落に端を発した世界同時不況の波を受け、国内景気は低迷した。一部で景気は回復の兆しをみせているといわれるが依然、 厳しい状況が続いている。経済産業省の商業動態統計の2009年回顧によれば、同年の商業販売額は、493兆7,960億円で対前年比は実に▲20.5%。7年ぶりの減少ではあるが、その減少率は大きい。このうち、小売業販売額には132兆3,280億円、対前年比▲2.3%で、こちらは2年ぶりの減少となっている。2010年に入り、やや持ち直してきてはいるが、総じて流通業は厳しい環境下にある。
 小売業の業種別にみてみると、2009年後半において環境対応車の販売が好調になった自動車小売業と、エコポイント対象商品の薄型テレビや電気冷蔵庫の販売好調であった機械器具小売業の販売額は増加したが、原油価格高騰の反動でガソリンなどの石油製品価格が低水準となった燃料小売業や消費者の節約志向や天候不順の影響を受けた各種商品小売業、ゲーム機関連商品などが不調であったその他小売業などは苦戦している。
 大型小売店も苦しい。販売額は19兆7,786億円、対前年比▲5.6%と2年連続の減少。既存店ベースでは、同7.0%と18年連続での減少となった。大型小売店を業態別にみると、まず、百貨店ではセールや催事効果はみられたものの、消費者の買い控え、天候不順、高額商品の販売不振などで、前年比▲11.2%で12年連続の減少となった(既存店ベースでは、同10.1%。13年連続の減少)。スーパーでは、外食から内食への回帰に伴い飲食料品は比較的堅調であったが、衣料品は低価格化や天候不順の影響で売上が伸びず、対前年比▲2.1%となり、3年ぶりの減少となった。スーパーの既存店ベースでも、同5.0%で、こちらは、18年連続の減少となった(図表1)。

図表1.商業販売額の推移と大型小売店の販売額の推移
出所:経済産業省商業動態統計調査


 さらに、これまで成長基調で推移してきたコンビニエンスストアでは、年間商品販売額は7兆9,808億円で対前年比0.5%となった。辛うじて11年連続での成長となっている。しかし、内食回帰の影響を受け、ファストフード・日配食品が不調となり、同商品カテゴリーの年間販売額は2兆6,978億円、対前年比▲2.1%で、同調査開始以来となる11年ぶりの減少に転じた。
 2010年に入り、1~3月期の動向を確認すると、商業販売金額全体では122兆8,320億円(対前年同期比▲0.8%)、卸売業では89兆250億円(同▲2.4%)、小売業は33兆8,070億円(同3.7%)となっている。卸売業と比べ、小売業にはやや持ち直しの感がある。自動車小売業、燃料小売業、機械器具小売業などは好調である。しかし、大型小売店は、4兆6,990億円(同▲4.9%)と引き続き苦戦が続いている。

2.4期連続伸長しているチェーン小売
 このように、景気後退に伴う個人消費の縮小の影響を最も受け、大型小売店、いわゆるチェーンオペレーションにより経営される組織小売業の苦戦が顕著になっている。特に、水没店の拡大は深刻である。これは、消費者の節約志向によりモノが売れないということだけではなく、2008年のイオンの「価格凍結宣言」に端を発し、業界で激化している低価格競争も要因のひとつとなっている。イオンでは、同社のPB・トップバリュの値下げアイテム数の拡大、さらにはNBの値下げへと低価格政策を展開、定価販売を守ってきたコンビニエンスストアでも値下げや弁当の主力価格帯を低い方へシフトさせるなどの動きに繋がった。また、イオンとダイエーの資本・業務提携やミレニアムリテイリングなどの3社による「そごう・西武」の誕生など、生き残りをかけた再編や統合の動きも目立った。
 この間、ネットスーパーなどの取り組みや薬事法改正に伴い調剤併設型ドラッグストアの展開などが一部では見られるものの、肝心のお客様との接点における取り組みや開発においては革新的なものが無いまま推移している。お客様に一番近くて、そのニーズを直接把握できるポジションにあるはずの小売業は全体でみると低迷が続いている。
 しかしながら、個別の企業の業績を確認してみると、不況に打ち勝ち、持続的に成長している流通企業も存在する。
 今回は、商業界「日本スーパー名鑑'10」に収録されているデータを用い、流通企業各社の業績を確認してみた。収録されているチェーン本部のうち、5店以上の店舗展開をしているチェーン本部は785ある。これらのうち、直近4期の決算において連続して増収しているチェーン本部を抽出した(全国展開チェーンや生協は除く)。
 その結果、4期連続増収であったチェーン本部は、全体の16.6%、130チェーン(17%)存在することが分かった。これら4期連続増収のチェーン本部が展開している主要な業態について集計してみると、その構成比は、スーパーマーケット(61%)、ドラッグストア(28%)、ホームセンター(12%)となっている。
 その成長率については、まず、785のチェーン本部全体の直近4期における平均成長率は、1.3%(決算データが計算可能なチェーンのみ対象)であった。それに対し、4期連続増収のチェーン本部の同期間における平均成長率は7.1%であり、持続的に成長しているだけでなく、その成長率が高いことが分かった。これを、同様に業種別にみると、スーパーマーケット(平均成長率8.9%)、ドラッグストア(同6.6%)、ホームセンター(同7.1%)となっている(図表2)。

図表2.4期連続増収チェーンとその業態別構成


 企業により決算期が若干異なってはいるものの、この5年間の同じような経済環境下において、小売業、特に組織小売業が苦戦している中、4期平均7.1%という高い成長を達成している流通企業が130チェーン存在しており、構成比では、苦戦しているはずのスーパーマーケット業態が多いということが分かった。

3.これまでのチェーンオペレーションを越えた展開
 4期連続増収の130のチェーン本部は、一体どのような施策展開をしているのだろうか。何が持続的で高い成長率を生み出しているのだろうか。今回は、各チェーン本部が実施している施策に関する情報を、当該チェーン本部のホームページで掲載されている情報や業界紙誌に掲載されている記事などから収集し、その集計・分析を試みた。
 その結果、130のチェーン本部で展開されている施策は、小項目レベルで61があげられた。これらの項目は、小売業の活動である「仕入れ」「品揃え」「売価設定」「売り方」「売り場づくり」「来店客へのサービス」「出店政策」「インフラの整備」「商圏などのリサーチ」という九つの大項目に整理が可能である。各々の大項目に含まれる小項目を概観すると、以下のようになる。
(1)仕入れ:個店裁量による仕入れ、地場産品の仕入れ など5項目
(2)MD・品揃え:地域特性に合わせる、顧客要望を活かす など15項目
(3)価格:低価格販売、EDLP など5項目
(4)売り方:対面販売、店内でのイベント など11項目
(5)売り場:売り場面積の拡大、レイアウトの工夫 など5項目
(6)ユーザーサービス:店内加工、返品制度 など5項目
(7)店舗展開・運営:多店舗展開、ドミナント出店 など10項目
(8)インフラ整備:物流、情報システムなど 3項目
(9)リサーチ:顧客カード分析 など2項目
図表3.4期連続増収チェーンの実施施策(上位20)
 これら61の取り組み項目の実施が、持続的で高い成長率を生み出したことになる。このうち、130のチェーン本部において実施数の多い項目を確認すると、
  • 地域特性に合わせた品揃え (16.2%)
  • PB開発・PB注力 (13.1%)
  • 豊富な品揃え (13.1%)
  • 低価格販売 (13.1%)
  • ドミナント出店 (10.8%)
  • ミールソリューション対応(総菜の充実) (10.0%)
が上位であり、品揃えに関する工夫、価格、売り方、出店の工夫などを図ったチェーン本部が多かったことが確認できる(図表3)。
 さらに、大項目に関し、小売業経営の主要項目に絞り、実施施策の特徴を概観整理してみると、つぎの通りである。
(1)仕入れ
「本部主導による大量仕入れ」というこれまでのチェーンオペレーションの基本ともいうべき仕入れスタイルではなく、「顧客の要望を反映し、個店の裁量で仕入れる」「地場産品の仕入れに力を入れている」というチェーンが多い。本部仕入れという効率重視ではなく、出店している各地の商圏の特性を重視しての仕入れが行われている。
(2)MD・品揃え
「POSによる死に筋カット」に注力しているというチェーンは少なく、逆に「圧倒的で豊富な品揃え」が多く行われている。ここでも各店が所在する「地域の特性に合わせた品揃え」が考えられている。
(3)価格
価格に関してもこれまでのチェーンオペレーションの特徴であった「単品量販による低価格販売」よりも、一歩進んだEDLPの取り組みの方が多い。また、一部ではあるが高価格での販売を実践しているチェーンもみられた。
(4)売り方
「チラシの工夫」で集客して「セルフ販売」という項目への注力しているチェーンは少ない。同じ商品でも量り売りなどに対応する、対面での販売を行う、といった売り方に注力しているチェーンの方が多い。
(5)売り場づくり
「売り場面積を拡大し、回遊性などを工夫する」といった売り場づくりに注力しているチェーンは少数に留まった。店舗を大型化するのではなく「レイアウトの工夫」「売り場のアミューズメント化や演出」という工夫をするチェーンの方が多い。
(6)店舗展開
「多店舗、大型店の出店」よりも「ドミナント出店」「地域特性に合わせた多様な業態の開発」を行うチェーンが多くみられた。
主要な大項目について、より多く実践されている施策を再整理すると、つぎの通りである。
(1)仕入れ:顧客要望を反映し個店で仕入れ、地場産品の仕入れ
(2)MD :圧倒的な品数、地域特性に合わせた品揃え
(3)価格 :EDLP、高価格での販売
(4)売り方:量目を豊富に、対面やカウンセリング
(5)売り場:レイアウトの工夫、売り場のアミューズメント化
(6)出店 :ドミナント出店、地域特性に合わせた多業態の開発
 こうしてみると、4期連続増収しているチェーン本部が展開している施策は、旧来のチェーンオペレーションの特徴であった「本部主導、大量単品仕入れ・低価格販売、チラシ集客、売り場拡大、多店舗出店」というものとは異なっているということが指摘できる(図表4)。

図表4.実施活動の高低にみる特徴


 画一的なチェーン運営で規模と効率を追求するというスタイルではなく、
  • 地域特性をじっくりと読み込み、それに併せた業態を出店する
  • 売り場の工夫や店内イベントなどを通じ、他店にないユニークな集客を行う
  • 個店の裁量により、自店の商圏固有のニーズに合わせた幅広い豊富な品揃えを行う
  • 量目や価格を工夫することにより、確実な購買につなげる
といった点が共通する項目となっている。
 地域需要に合わせてカスタマイズを丁寧に実践することを通じ、より地域に密着しているチェーンが伸長している。お客様が求めているもの・ことにきちんと対応する、という商売の原点に照らしてみれば、当たり前のことを、競合よりもうまく確実に行っているチェーンが、お客様に評価されているといえる。
 さらに、次回からは、第二部として、具体的なチェーンを取りあげ、そのチェーンの強みの源泉となっている展開施策を紹介していく。
(2010.05)

本稿は当社代表・松田久一からの貴重な助言のもとに執筆されました。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。


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